uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

【前立腺】ホルモン治療後の前立腺癌の組織像とグレーディングしない理由

ホルモン治療後の前立腺癌に対してはGleason scoreをつけないことになっています。これは治療による癌腺管の形態変化がおこるために正しいグレーディングができなくなるからです。

短期的に抗アンドロゲン製剤を投与された後に全摘された症例です。

この写真ではそれほど治療の影響はありません。クリスタロイドもみられる高分化な腺癌です。基本的にはsingle, separeted glandsの集簇からなるためGleason score = 3+3相当と考えられます。

 

さきほどの視野からすこし離れた部分です。やはりクリスタロイドを容れる癌腺管を認めます。しかし腺管の大小や不規則性が目立ち、ill-defined gland 様に見えるので、3+4以上をつけたくなるような組織像です。腫瘍腺管は周囲に裂隙が目立ち、収縮しているようにも見えます。治療による修飾がなければ3+3であったと推測されます(本当のところはわかりません)。

 

さらに少し離れた視野です。単核球主体の炎症細胞浸潤が目立ち、より腺管構築が不明瞭化しています。腺腔形成がはっきりしない所見を強くとれば pattern 5 をつけてしまう病理医もいるでしょう。これもやはり3+3の腺癌が治療による変化を受けたものと推測します(本当のところはわかりません)。

 

以上から、治療によって組織変化が起こってしまうので治療後はグレーディングしないということになるのです。

本質的な悪性度(=Gleason grade)よりも高く評価してしまうことにつながると、治療後の前立腺癌は悪性度が高いという誤認が生じてしまうことでしょうし、逆に予後良好群を高悪性度群として扱うことで、その高悪性度群の治療成績が向上したようにみえてしまうのです。