副腎皮質腺腫と癌の鑑別において用いられるWeiss の criteria について記しておきます。
この指標は9項目からなり、3項目以上を満たせば副腎皮質癌と診断されます。
「Weiss の criteria」
1.高度な核異型
2.核分裂像の亢進・・・ 高倍率50視野中5個をこえる
3.異型核分裂像
4.好酸性細胞質・・・ 好酸性の腫瘍細胞が1/4以上を占める(淡明な腫瘍細胞が1/4未満である)
5.びまん性の組織構築・・・ 腫瘍の1/3を超えた領域で正常副腎に類似する索状構造
が消失している
6.凝固壊死
7.被膜浸潤
8.類洞浸潤・・・ 平滑筋を有していない毛細血管への浸潤像
9.静脈浸潤 ・・・平滑筋を有する血管への浸潤像
Ki-67 labeling index
免疫染色にてKi-67標識率が5%をこえるほとんどの症例は副腎皮質癌としても矛盾しないとされています。
優れたscorig system
「皮質腺腫」か「皮質癌」か。病理所見のみから良悪を判断しなければならず、組織学的に良悪をつけることができない褐色細胞腫と比べると悩ましいこともあります。
凝固壊死や異型核分裂像については「有る無し」が観察者間で一致しやすいでしょうが、その他の項目については病理医でもかなりばらつきそうです。
凝固壊死や異型核分裂像がなくても通常の副腎皮質腺腫とは違う。そんなときに私はKi-67を染色して参考にしています。
ただし悩む症例では免疫染色をしてもKi-67 index が5%前後であったり、視野によってばらつきがあったり、リンパ球が混在してわかりづらくなっていたりします。
優れたscoring systemではありますが、もう少しクリアカットに診断できるようになればありがたいところです。

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ついでに・・副腎という臓器の特殊性
日本では「副腎=泌尿器科」のイメージがありますが、副腎は内分泌臓器なので教科書的には甲状腺・副甲状腺の仲間です。
ですので、泌尿器病理医としては実は専門領域外のような感覚があります。Epsteinらの書いたUropathologyにもWHOの urinary system and male genital organs にも AFIPの Tumors of the kidney, bladder, and related urinary structures にも副腎は記載されていません。
臨床的にも基本は内分泌内科の先生が診ていて、手術だけ泌尿器科に依頼するというところが多いのではないでしょうか。
泌尿器科はほんとに多くの臓器にわたるので、教科書や規約が多く困ります(個人として教科書をそろえるには金銭的に厳しいT^T)。

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