腎癌(腎細胞癌)の病理組織学的TNM分類について以前記載しましたが、腎癌のグレーディングについてもここに記しておきます。現規約では「従来の日本規約」に加えて「Fuhrman分類」についても記載されています。
なお現行のWHO classification にはWHO/ISUP grading system が載っていますのでこれについても付記しておきます。
日本規約(従来の3段階)
腫瘍細胞の核のサイズと近位尿細管の核のサイズを比較する
核の大きさ<尿細管の核 ⇒ G1
核の大きさ=尿細管の核 ⇒ G2
核の大きさ>尿細管の核 ⇒ G3
※gradeを併記する(G2>G1 etc.)
Fuhrman grade (4段階分類)
核小体が目立たない。小さく丸い一個の核(10μm)。⇒ Grade 1
核小体は400倍で認識できる。より大きな核(15μm)。核縁不整(+)。⇒ Grade 2
核小体は100倍で認識できる。さらに大きな核(20μm)。核縁不整(+)。⇒ Grade 3
奇怪核・分葉状核・粗大クロマチン・肉腫様変化 ⇒ Grade 4
※最高gradeを採用する
WHO/ISUP grading system
Grade 1からGrade 4の4段階分類、1~3については核小体を評価する
核小体がない or 不明瞭で好塩基性 ⇒ Grade 1
400倍で好酸性の核小体が認識できる (100倍では見えても不明瞭) ⇒ Grade 2
100倍で好酸性の核小体が認識できる。⇒ Grade 3
核の多形性が高度、多核巨細胞、横紋筋や肉腫様の分化がある ⇒ Grade 4
※ clear cell RCC / papillary RCC に関する分類 (前2者はclear cell RCCに関する分類)
実例の画像
↑ 左からG1・G2・G3・尿細管(コントロール)です。
(同一症例・G1~G3が含まれる同一切片内の画像です)
核の大きさから判断する日本規約でのGradeとして載せています。
WHO/ISUPの場合は核小体の所見のみで判断するので、すこしずれてくるかもしれません。Fuhrman grade の場合は核の大きさと核小体の所見をあわせて判断するので、日本規約との一致率は高いと思います。
日本規約以外は100倍や400倍にして核小体の有無を評価する必要があり、診断者間のずれも少なくないのではと思いますが、今後は国際基準に統一されていくでしょうから慣れていく必要があると感じています。
(個人的には日本規約は診断者にとってGradingしやすく、再現性も担保しやすい非常に優れている分類と思っています。しかし、今の時代に日本独自の基準を持つ意味はないので、混在を避けるためにも規約からは早急に削除されるほうが望ましいのではないかと感じています。)

- 作者: Holger Moch,Peter A. Humphrey,Thomas M. Ulbright,Victor E. Reuter
- 出版社/メーカー: World Health Organization
- 発売日: 2016/02/02
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る