こんにちは。
スマホで病理のミクロ像を撮影するために色々と工夫してきたのですが、また少し改良を加えたので報告。
なるべく手軽に病理組織像を撮影するために、接眼レンズから覗き込むように撮影するいわゆるコリメート法を用いてます。
当初はフリーハンドでスマホカメラをあてがって撮影できるよ(https://www.pathonosuke.net/entry/2016/03/09/181040)
みたいな感じでやっていたのですが、ちょっとしたテクニックが必要だったり、光が写り込んでうまくとれなかったりするので、撮影用のアダプターを作成。
(https://www.pathonosuke.net/entry/2017/08/23/220618)
それをさらに改良して
(https://www.pathonosuke.net/entry/2018/08/14/232745)
(https://www.pathonosuke.net/entry/2018/08/20/143134)
材質も木→ポリスチレン→プラのキャップ→アルミ缶のキャップのように進化させてきました。
最終的にアルミ缶の蓋に穴をあけたアダプタがシンプルで作成しやすくてよかったのですが、もうちょっと使い勝手の良いものを作りたいと思ったのが今回の記事のきっかけです。
とりあえず最新版はこんな感じになりました。
接眼レンズの両眼の部分にひっかけるようにアダプターを設置して、自分でスマホを保持しなくてもミクロの画像を写すことができています。
スマホをはずしてアダプターだけにしてみました。右下の丸い穴がちょうどスマホの背面カメラの位置になります。
裏からみると両眼の接眼レンズにひっかけているだけ。これでも意外と安定しているのが不思議。
材料は極めて安価です
・MDFとよばれる100均で販売されている繊維をかためた板材。
・六角ボルトと蝶ナットが各2個ずつ。これは接眼レンズの大きさによって微妙に変わる位置の調節用につけています。ホームセンターの小売で数十円。
長らくスマホを使った病理画像の撮影をやっていて気付いたことですが、スマホの位置や向きを完璧に合わせて画像を撮るというのは意外と難しいもの。
これには理由があって
①接眼レンズに対してある1点にカメラを位置させる(空間でのx, y, z の座標を合わせる)
②接眼レンズの光軸に対してカメラの方向を合わせる(空間ベクトルの向き, x : y : z を合わせる)
③その状態を保持する
という3点を同時に達成することが難しいからだと思います。(表現が変ですが伝わるでしょうか?)
この「空間的な位置」 と「空間での方向性」を正確に合わせた上で「動かさない」ようにするのが今回のアダプターの役割です。
接眼レンズの両眼に対して板をあてることで、この面に対して平行が得られるため①のうちのy(高さ)・z(レンズからの距離)座標が決まります。同時に②の光軸方向にカメラの方向を合わせることができてしまいます。手で保持しないので触らなければ③が達成できます。
あとは左右にずらし①のx座標を設定する操作により、位置・方向あわせができるというのが今回のアダプターの良いところです。
では作成手順です。完成形をまず見ていきます。
前面から
背面から
今までのものと比べると作成に手間がかかっています。が、さすがに素人の工作といったクオリティですね。
逆L字というか逆T字になっているところにスマホを載せます(SSA/Pではありませんw)。背面には少し大きな穴があってそこが覗き穴になります。前面の穴は径1cmで背面の穴は径3cmくらいですが、この辺はスマホカメラの大きさや接眼レンズの大きさに合わせるようにします。
前面の小さな四角の窓のところには六角ボルトの頭が埋めてあり背面の蝶ネジでそれぞれ留めています。
作成といってもMDFをのこぎりで切り出して木工用ボンドで接着するというのがおおまかな手順。
自作ののこぎりガイドを使って、切っているところです。のこぎり木工というサイトを参考にしました。
サイズはかなり適当でとにかく現物合わせです。ただし厚みだけは14mmくらいになるように切り出しました。
板の面に対して垂直に切らないと精度がでないかもしれないのでガイドを使い丁寧に。
これを木工用ボンドで箱型に接着していきます。
さらに穴あけをやっていきます。以前作ったアルミ缶のキャップを使いつつシルシをつけていきます
穴あけにはやはり電動工具がないと難しいです。
糸鋸やジグソー・ホールソーなどがあるといいのですが持っていないので、たくさん穴をあけてくりぬき、やすりで整えました。
次にスマホを載せる台の部分を作ります。これも適当なサイズに切り出してボンド接着です。接着するときにきっちり位置を合わせておかないとカメラと穴の位置があわなくて困るので、ここは慎重に。
裏側の引っ掛ける部分は残ったMDFを使います。クリップで留めて使ってみたところです。このとおり手を離していても顕微鏡画像がキレイに表示されています。
手を離しても大丈夫なので、この状態で視野を動かしても大丈夫ですし、対物レンズを変更することもできます。 オートフォーカスが効くのでピントは勝手に合います。
クリップのままでも使用できますし、ボンドで固定してしまうこともできますが、ここでは上下方向に調節できるようにひと工夫。
引っ掛け部分に2ヶ所の溝を作り
反対側(表側)から穴をあけてボルトを通し、蝶ナットで固定します。
表側にボルトの頭がでると困るので、中に埋まるように窓を広げました。
ナットをゆるめることで引っ掛け部分を上下に動かすことができます。
これで完成です。
とにかく
・光軸合わせがラク
・手がフリーになる
・ブレがない
・動画を撮る事も可能
など、メリットが増えました。またここから発展して
・テレビ電話ができるアプリを使えば (LINE, DUO, skype, ZOOMなど)、リアルタイムで画像を見ながら話ができる
ということも可能になりました。専用のシステムなしに遠隔病理コンサルテーションやカンファレンスも行うことができそうです。
予定はありませんが、診断の様子を実況中継するユーチューバーにもなれそうですね。
デメリットを挙げてみると
・作るのが手間
・やや大きい(17×8×3cmくらい)
・自分のスマホ専用(買換えたら辛い)
・落ちてしまう不安がある(スマホ置くだけ、アダプタひっかけるだけ)
など弱点もあります。
実際にかばんに入れて持ち運ぶというよりも自分の顕微鏡のそばに置いて、画像を取りたいと思ったときに使うというやり方をしています。
サイズの違うスマホでも使えるように調節機構を加えたり、材料をかえたり、保持機構を工夫したりと、基本的な構造を変えずに改良するのが今後の目標です。
今回使用した道具はこちらです。

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