こんにちは。
Clear cell papillary renal cell carcinoma (CCPRCC) と思われる症例を1例経験したのですが、未だ診断したことがないので少し勉強してみました。
おそらくWHOに登場してから認識されるようになった疾患ではないかと。

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泌尿器病理のバイブルともいうべきWHOブルーブックでは、p40-41に記載されています。
日本規約にも少しだけ記載があるのですが、終末腎だけに生じるわけではないということが今ではわかっています。
今回の症例は、49歳男性で腎部分切除検体です。
境界明瞭な腫瘤で周囲の硝子化が目立ちます。腎に限局。
拡大すると、淡明な腫瘍細胞の増殖からなることがわかります。
しかし、血管隔壁に取り囲まれた胞巣状増殖を示す clear cell RCC とは異なる組織像を示します。
tubular, cystic, solid, papillary な成分が混在。
核は直線的で基底膜から離れて並ぶ " linear arrangement " と呼ばれる配列や、特徴的な分枝をしめす管状構造もみられます。
核は小型で核小体も不明瞭な low grade です。
これは、clear cell papillary RCC ではないかと疑い免疫染色を追加したところ、
CK7 が陽性
CD10は、陰性といいたいところですが、部分的に弱陽性でした。
CK7が強陽性を示すため、Clear cell RCC でなく CCPRCC だろうと考えましたが、CD10の陽性所見は合致しない。
もちろん免疫染色は常に基本的なパターンをしめすわけではなく補助的に用いるものですので、組織像を優先すべきかと。
Patel S, Asarian A, Xiao P. Clear cell papillary renal cell carcinoma: a case report and literature review. J Surg Case Rep. 2019;2019(6):rjz177. Published 2019 Jun 18. doi:10.1093/jscr/rjz177
↑ の文献をあたってみると、
" CCPRCC is a low-grade RCC which is strongly positive for cytokeratin 7 (CK7) and mostly negative for CD10 "
とあるため、CD10陰性症例が多いことにはなっています。 ただし mostly なので例外もあり、といったところ。
最終的には、組織像が特徴的・CK7陽性・頻度的に割と多い(腎腫瘍の1-4%で4番目)ということを考えて、Clear cell papillary RCC と診断しました。